【安価で小話】アトリとゴーストドリーム

※この小話には、一部AIのべりすとを使用しています。

その悪夢は、ゴーストドリームと呼ばれていた。寝ている間に、夢としてゴーストタイプのポケモンたちのみが生息する世界に飛ばされるというものだ。脱出は困難とされており、今のなお、その悪夢に閉じ込められたままの人やポケモンが痕をたたない。また、この夢に囚われた者は、二度と現実世界には戻って来られないという噂もある。とあるゴーストポケモンが作り出した空間との説もあるが…真相は定かではない。そして、この悪夢に飲み込まれる人物が、また一人…。
アーカラ島の守り神に祈りを捧げる踊り子、リーフィアの擬人化のアトリ。このところ、大きなイベント事が続いているため、疲れていたのかぐっすり眠っていたのだが……。
「……ん?」
目を覚ますと、そこは見知らぬ土地だった。
「ここは…どこ?」
空は暗く、怪しい紫色。地面も紫だ。そして、なぜか見慣れたものが落ちている。
「これ…カボチャ?」
そう。何故か、カボチャが落ちているのだ。それも、普通のものじゃない。巨大なもので、人の頭くらいはある。
「なんだろう…こんなに大きなカボチャ、見たことない」
近づき、そのカボチャをノックするかのように手で軽くコンコンと叩いてみる。すると、カボチャの一部がひび割れ、まるでジャックオランタンかのような顔の模様が浮かび上がるように皮がポロリと落ちた。その瞬間、カボチャの上から胴体と髪のようなものがギュンと勢いよく生えてくる。
「違う…カボチャじゃない…ポケモン…!」
以前、博学な友人から教えてもらったことがある。アローラ地方にはいない、カボチャに似た姿をしたポケモンパンプジンのことを。目の前にいるのは、まさしくそれだ。たしか、このポケモンのタイプはゴースト…つまり…。
「これは…ゴーストドリーム…!?」
噂でしか聞いたことのないような現象だが、まさか自分が体験することになるとは思わなかった。警戒したアトリは、すぐさまシャムシールを構えようとする。しかし、どこを見ても武器になるようなものがないことに気づく。
「どうしよう……このままじゃ戦えない……!」焦り始めたその時、パンプジンはこちらに向かってくる。逃げるしかないと思ったアトリだったが、体がうまく動かない。
「え?どうして……!?」
ふらついたアトリはそのまま倒れてしまう。意識が遠ざかる中、最後に見えたものは……不気味な笑みを浮かべて手招きをするパンプジンの姿だった。

アトリが目を覚ました時、彼女は自室のベッドの上だった。ゴーストドリームから抜け出した…のだろうか?
「あれは夢……?」
だとしたら、何という恐ろしい夢を見たんだろう。それに、そこで出会ったあのパンプジンは一体……。そう思いながら、体を起こす。何故か体が重い。特に胸の部分を中心にして、何か重しでも乗せられているような感覚がある。
「なんだろ……これ……」
不思議に思ったアトリは、鏡の前に立つ。やけに疲れたような顔が、そこにはあった。
「…あんな夢みたら、仕方ないか」
そう思い、鏡から離れようとしたその時、突如として体の自由が効かなくなる。まるで体の内側から何かが一瞬にして侵食してくるかのような感覚に襲われた後、ガクンと気を失うかのように視界が真っ暗になった。
再び目覚めた時には、まだ鏡の前にいた。しかし、すでに体は動かなかった。いや、正確に言えば、動くことはできたが、自分の意思で動かすことはできなかった。
「キャハハっ!セいコうね!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。それは紛れもなく、自分の声…なんとか鏡に視界を向けると、そこに映っていたのは自分の姿はいつもと違った。黄色と緑のグラデーションの髪は、暗めのピンクに染まり、瞳は光っているかのように黄色一色に染まっていた。それはまるで、パンプジン…。
(何これ…どうなっているの!?)
アトリがそう叫ぼうとするも、口は動かない。その言葉は、彼女の脳内でこだまするだけだった。「驚イたかしラぁ~?アなたの体を乗っトッてあげたノよぉ♪」
アトリの体で話すパンプジンが言う。
「さっキまであナタがいた世界ハねェ、あたしたちがいるゴーストドリームの世界。夢トしてシカ干渉デきないンだケド、アの世界ヲ通しテ誰カヲ乗っ取れバ、現実でもこレだけ自由に操れるってワケぇ」
アトリは理解した。先ほどまでの奇妙な出来事は全て、パンプジンによって起こされたものだと。
(そんな…なんでこんなことを…私を乗っ取って、何をする気!?)
「何をスルつモリぃ?決まってルじゃナイ!」
パンプジンは高笑いをしながら、こう答えた。
「このカラダを使って、魂ヲ食ベるのサァ!」
(魂を…!?)
「あたしたチの種族は人間ノフりをして魂ヲ食らってきタ。けド、最近は対策さレルことも多クなった…だカら、本物の人間のかラダを使エばいいンだよ!」
パンプジンの言葉を聞き、アトリは戦慄した。まさか、こんなことになるなんて……。しかし、これで黙っている彼女ではない。
(そんなこと…させない!)
なんとかして抗おうとする。自らの気力で、体を取り戻そうと必死にもがく。だが、パンプジンの力には到底敵わなず、アトリの意識が途切れる。そして、ついにアトリの体は完全にパンプジンのものとなってしまう。
「あー楽しかった。この子ノ体、使いやすイネ」
パンプジンは、まるでおもちゃの人形のようにクルリと回ってみせる。
「せっカクだシ、魂を喰らウ前にコの体で遊ボうかシラ」
そう言ってパンプジンは、アトリの部屋にあるクローゼットを開ける。すると中から出てきたものは、色とりどりの衣装だった。
「このカラダは踊り子ミみたいネ。それジャ、まずはこの服ニ着替えようかしラ」
手に取ったのは、アトリが持っていた踊り子としての正装である衣装だった。それを身に纏ったパンプジンは、再び鏡の前に立つ。
「うーん、アマり好みジャなイなぁ」
そう言うと、彼女の体から霊力が出て、衣装を染め上げていく。パンプジンと同じ色に……。やがて完全に変身を終えた彼女は、不敵に微笑む。
「ふフん、こんナ感じかしら?」
その姿はまるで、パンプジンの擬人化そのものとなっていた。
「キャハハッ!どウ?あたしとそっくりでショ?まぁ、今の姿はコの子の体を乗っ取っテいる状態ナんだケド」
そう言いながら、自分の胸を触ったり、髪をいじってみたりしている。
「コノ人間の体は胸元ガ少し重いわね。けどおモシろい!」
再びくるりと回ると、体が自然と動き出しそうになるのを感じた。踊り子のアトリの体に刻まれた、祈りの舞が勝手に始まったのだ。その動きに合わせて、パンプジンは軽やかなステップを踏む。
「キャハハ!スゴい!アタしが踊ッテいルみたイ!そレに、なんだか楽しくなってきたヨ!」
踊りに合わせて揺れ動く髪が、キラキラと輝いているように見える。しかしその舞に、カプ・テテフへの信仰心はもう微塵もない。
「もっと……モット……!アソビたい……!!」
瞳が妖しく光る。その瞬間、彼女の体から黒いオーラのようなものが溢れ出す。
「キャハっ♪これデ、あたしの力がさらに増すワ!」
そう言ってパンプジンは、アトリの体で舞を続ける。
「さテ、そろソロ魂ヲいただこうカシラ……」
彼女は扉を開け、外に出た。
「待っててネ……アローラのみんな」
アトリの体に乗り移ったパンプジンは、その邪悪な意思のままに、家の外であるオハナタウンに出た。いつもは映画の西部劇のような雰囲気の街だが、今日は飾り付けが行われている。何か祭りでもあるようだ。当然、人も多い。
(こレダけ多くノ人がいレバ、魂を喰ラい放題ね)
パンプジンは舌なめずりをした。そして、アトリの顔でニヤリと笑う。
「あア……!ゾクぞくするワ……♪」
パンプジンは、早速人たちの前に姿を現した。突然現れたアトリを見て、街の人たちは驚いた。
「あれは……アトリさん?」
「なんであの子がここに?」
「というか、いつもと格好が違う?」
アトリの姿をしたパンプジンは、人々の前に立つ。
「えェ~、皆サン。あたシはカプ・テテフ様に仕える踊り子、アトリ。今日ハ皆さんニ大事なお話があって来マシタ」
人々はざわつく。パンプジンは、このまま多くの人の魂を喰らうつもりだった。しかし、人々の反応は予想外のものだった。
「あ、そうか!アトリさんも仮装してきたんですね!」
「おお、似合ってますよ!すごく可愛いです!」
「そうだな!アトリさんのコスプレ姿、最高じゃないか!」
アトリの姿を見た人々から歓声が上がる。そして、パンプジンに向けて拍手喝采が巻き起こる。
「……へ?」
思わず間抜けな声を出してしまう。実は、今日は10月31日。すなわち、ハロウィン。この街で行われている祭りも、ハロウィンのものだった。パンプジンは、そのことに気がついていなかったのだ。
「あ、あのサ……!これは違ウの!あたしはアトリじゃなくて……」
「でもすごいですよ!」
「うん!とても可愛い!」
「ねぇ、写真撮ってもいいですか!?」
パンプジンの必死の弁明は誰にも届かず、人々は彼女に話しかけてくる。その様子は、まるでアイドルに群がっているファンたちだった。流石に彼女も困惑。人々を跳ね除け、後退りして叫んだ。
「ちョっと……!それ以上近ヅクと、お前ラの魂喰ラウよ…!!」
しかし…
「流石アトリちゃん!演技も完璧!」
「この島の踊り子だからな。今日の祭りのために練習してくれたんだろう?」
「やっぱりこの子はいい子だよ!」
「素敵!一生推すわ!」
そんな言葉が返ってくるばかりである。パンプジンは頭を抱えたくなった。
「何で誰も信じてくれナイの……?あタシは、本当に……」
さらに、事態は悪化していく。
「というか、さっきの演技ってイタズラなのかな?」
「じゃあお菓子あげないと!ほら!」
「ああ、確かに!」
「そうね!」
そう言うと、人々が一斉に菓子を取り出した。
「えっ、ちょっト待っテ!」
焦る彼女をよそに、どんどんお菓子を渡す人が増えていった。
「トリックオアトリート!!ハッピーハロウィン!アトリちゃん!」
「いや、違うのヨ!ホントは……!」
もはや完全に言い訳ができなくなったパンプジンは、逃げるようにその場を離れ、再びアトリの家の中に駆け込んだ。
(もうヤダ……。なンナのよ…)
慌てて駆け込んだせいで、床に散らばるお菓子。その一つを、彼女は手に取った。オレンジの包み紙の飴玉だった。
「……コレ、貰っちゃおうカナ」
彼女はその飴を口に放り込む。すると、口の中で甘い味が広がる。その味は、どこか優しさを感じた。
「アハっ♪なんだか懐かしイ感じがスルワ」
その感覚は、パンプジンにとって初めてのことだった。その不思議な感覚は、彼女の心を少しずつ癒していった。
「…あンナ風に人が構ッテくれるの、初メテ」
パンプジンというポケモンは、魂を喰らう存在として、人から恐れられて生きていた。それが、勘違いとはいえ、自分に対して優しく接してくれる人々がいた。その事実は、彼女が今まで生きてきた中で、一番嬉しかったことだった。
彼女にとって人間は、ただの餌でしかなかった。人間とはそういう生き物だと思っていた。しかし、実際は違った。彼らは優しい心を持っていた。それを知った彼女は、思わず涙を流す。
「……うゥ」
自分の目から溢れた雫を見て、パンプジンは驚いた。
「あれ……なんデ泣いてルノ?」
それは、アトリの心が涙を流したのか、あるいはパンプジン自身の感情によるものなのか。それは、彼女自身にも分からなかった。
パンプジンは泣き止むと、床に散らばったお菓子を片付けた。そして、再び扉を開けて外に出る。
「みんなごメンネ。急に集まっテクルから驚いチャッタ。でも、こコカらは一緒に楽しミマショ!」
今日くらいは、魂を喰らうポケモンではなく、この島の踊り子として接してもいいかもしれない。そう思ったパンプジンだった。
「アトリちゃーん!写真撮らせてくださーい!」
「えエ、いいヨ!」
パンプジンは笑顔で応える。そして、彼女は人々の輪の中に入って行った。その姿を見た人々は、歓喜の声を上げる。
「アトリちゃん可愛い!」
「今日は最高のハロウィンになったよ!」
「ありガトウ!あたしも皆サンのこと大好き!」
パンプジンは人々に手を振って答えた。この日、彼女は丸一日、ハロウィンの祭りを楽しんだ。「アトリさん、今日はありがとうございます!」
「うん!あたシモ楽しメタから大丈夫!」
パンプジンのその顔には、満足げな笑みを浮かべていた。その後、パンプジンはアトリの家に戻った。もらったお菓子を眺め、幸せそうな表情をする。
「今日ハ…楽しかったナァ…」
そう呟くと、パンプジンは眠りについた。

彼女が見る夢の中。パンプジンの姿は、アトリに憑依したままのもの。何もない白い空間に、彼女は立っていた。
「私の体で、遊んでどうだったの…?」
後ろから声をかけてきたのは、この体の本来の持ち主であるアトリだった。
「アトリ……!?どウしてここに……!?」
「あなたが私の体を乗っ取っている間も、途切れ途切れだけど意識があったのよ」
「そっカ……。それで……?」
「あなたのこと、ずっと見ていた。魂を喰らうとか言ってたくせに…結局、私のフリをして祭りを楽しんでいたじゃない」
「だって、そレは……」
パンプジンは言葉を詰まらせる。
「別に責めているわけじゃない。ただ、ちょっと気になってね」
「……あタシ、人の体が欲しかッたの。だから、アトリの体ヲ奪って、この姿で、魂を喰らうツモリだった。そしたら、みンナ優しくて。こんなの初めてダッたカラ……」
「そう。なら、よかった」
「え?」
意外な言葉に、パンプジンは驚く。
「私を乗っ取るなんて…最初はびっくりした。それでも、みんなに喜んでもらえるんだもの。それだけで十分」
「…アトリは優しすぎルヨ。もっと怒ってモいいんダヨ?なんデ怒らなイの……?」
「あなたにも、優しさがあるから」
「……!」
カプ・テテフ様は、癒しの神。戦いで傷ついた人やポケモンを癒す、優しさの象徴。魂を喰らうと言っていたあなたが、人の優しさに触れて、その気持ちを知ったはずだから」
「……うン」
パンプジンは小さく返事をした。その目には、少しだけ涙が浮かんでいた。
「それに、私が怒ったところで、何か変わるのかな」
「……変わらないカモ」
「でしょう。だから、私はもう怒らない。その代わり、約束してほしいことがあるの」
「ヤクソク?」
「これからは人を襲わないでほしい。それが、私からのお願い。あなたは優しい子。それは間違いないから」
「……分カッたヨ!」
パンプジンは笑顔を見せた。
「……アトリの体を借りてイタけど、ソれで色々知れた。ありガとう。体は、返すネ!」
そう言うと、パンプジンの身体が光り始めた。そして、彼女の姿は徐々に消えていく。そして、夢から覚める時が来る…。

朝の日差しが、カーテンの隙間から部屋に差し込む。
「んん……」
アトリが背伸びしながら起き上がる。もう体は重くない。髪の色も、瞳の色も元通り。本当に、パンプジンはもういないようだ。
「どこか…清々しい」
パンプジンが抜けたからだろうか。いや、それだけではないはず。優しさに触れた、暖かい心。それは、きっと自分の中にも眠っている。
「またいつか、会えるといいな……」
そう呟きながら、アトリはベッドから出た。今日は、いつもよりいい朝になりそうだ。